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皆が正しい ホッジャさんのお話

(丹南FMマガジン原稿) 2008. 11. 30

学力が全国一の福井県ですが、トルコはどこにある?と中学生に聞いて正解が何%くらい出るでしょうね? そのトルコで有名な13世紀頃の人物、ナスレディン・ホッジャさんのお話しです。ホッジャさんはイマムという身分、想像するに日本なら、お坊さまのように人々の相談や指導をしていたようですが、どちらかと言うと滑稽な逸話が多くてそれらを集めた本も出ています。

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あるときホッジャさんは土地争いの裁判をすることになりました。
Aさんが先ずやって来て、細かく自分の言い分を述べ立てましたが、ホッジャさんはそれを丁寧に全部聞いて、
「なるほど、お前さんの言い分は全く正しい」と告げましたので、Aさんは大喜びで帰っていきました。
それを聞いた相手方のBさんは、大慌てで即刻ホッジャさんの家に来て、自分の言い分を存分にまくし立てました。ホッジャさんはそれを丁寧に全部聞いて、
「なるほど、お前さんの言い分は全く正しい」
と告げましたので、Bさんも大喜びで帰っていきました。
今度は、一部始終を後ろの部屋で聞いていたホッジャさんの奥さんが「ねえ、あなた、二人とも正しいことは無いはずでしょう?」と言いましたが、ホッジャさんは妻の言い分を丁寧に聞いて、
「そのとおり、お前の言い分は全く正しい」と言ったのでした。

 皆が正しい、は、皆が正しくない、と同じになってしまう? ホッジャさんの奥さんが、おかしい、と思うのは当然ですが、このお話しが何百年も語りつがれて、今ではインターネットで、Everyone is right. というキーワードですぐにホッジャさんがヒットするなんて面白いではありませんか?
 我々は日常、物事を正しい、正しくない、といつでも判定できるような気持ちで暮らしていますが、よーく皆の意見を、先入観なし、わだかまりなし、義理なし、見得なし、損得なし、無理なし、の六無(ろくむ)の心境で聞けば、やはりホッジャさんの発言を、やむなし、と思うのかも知れませんね・・・?。
 新聞などをその気で読めば、具体例を挙げると差し障りがでるほど、あれもホッジャ、これもホッジャ、の記事ばかりだと思えませんか?“矛盾”は世の中にあまねく憑在(ひょうざい)しているようです。

蛇足
1 逆に六有(ろくう)が我々の判断を可能にしているのか?! 裁判員に当たりませんように!
2 憑在、ふだんは存在が見えなくても、幽霊のように何処にもいる?

京都エネルギー・環境研究協会 
 新宮秀夫

Written by Shingu : 2009年01月17日 15:48

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