ギリシャ悲劇 (丹南FMラジマガvol.18に掲載)
ギリシャという遠い国の経済破綻は対岸の火事ではない、と新聞に書かれていたが、果たしてギリシャは遠い国だろうか? 中学で習う円周率、つまり円周の長さは直径の3.14・・・倍、それはπ(パイ)と呼ばれるが、πはギリシャ文字である。小学2年生の国語の教科書には漢字表があって、空、月、犬、見・・・と沢山の字が並んでいるが、これらは中国語、である。人間はたったの2000年そこそこの間に、地球のあちこちで、それぞれに考えだした“文化・知識”をごちゃ混ぜに、誰もかれもが当たり前に利用する状態に到達してきたと見れば、遠い国なんて今は無いという気もする。
新聞には、いつ我が国も悲劇に見舞われるか分からないゾ、日本の借金はギリシャの10倍もある、と書かれていた。で、どうすりゃイイんや?という意見は書かれていない。こんな事態になっていますョ、とだけ書けば良いのが当今の新聞の論説らしいから、これは楽な商売だな、という気がした。
やるべき事は、消費の活性化などと言って、使えるものを捨てて、要らない物を買うことを政府が煽って、エネルギーの無駄遣いをし、経済界の安易な儲けを保護して来た悪習を絶って、倹約を基本とする、地道な経済に戻す事である。これは明らかだけれども、新聞の論説はそれを書か無いから、いつも尻切れトンボの記事になる。
そもそも、ギリシャはお金持ちの国だと思っていた。オナシス何とかさん、は世界の海運を牛耳る大金持ちでアメリカ大統領未亡人を妻にして・・・。なんていう、おとぎ話を聞いている身として、なんでギリシャが経済破綻している時にそんな大金持達が出動して祖国を救わないんやろうか?と思える。けれども、それがビンボー人の発想であるらしい事は、先般のアメリカ金融会社の破綻の時に、政府がなん兆円というお金(税金)を大会社に供給して救済したのに、その会社の社長達はそれぞれ何百億円のボーナスだか年俸だかを貰って平気だったらしい事を見ても分かる。
ホームレスがスーパーで100円の握り飯を盗んだら警察に捕まる。100億円国民の税金を横取りしても、プール付きの別荘でのんびり暮らせる。墨子という中国の先生に「少見黒曰黒、多見黒曰白」(一寸だけの黒を見たらそれを黒だと言い、沢山の黒を見たらそれは白だと言う)という言葉がある、社会の動き方は2000年前も今も基本的には同じらしい。
ところで、ギリシャ悲劇といえば、元来、経済の話ではなくて古代ギリシャの劇の事である。アリストテレスによれば、劇(ドラーマ)は悲劇こそ優れた人物を描くもので、喜劇はより劣った人物の描写だそうである。儲けに目がくらんだ、より劣った人達によって引き起こされ経済破綻は、勿論、喜劇と言われるべき事である。
経済破綻の喜劇をまた頑張って元に戻すのは結局、倹約を尊ぶ「正直でよく働く人たち」であることは間違いない。不平は山ほどある、しかしながら“ギリシャ悲劇”によく登場する、正義の女神(ディケー)は、すべてを見ておられて、誰が儲かるかとは関係なく、誰が幸福になるかをお決め下さるのである。
Written by Shingu : 2010年07月28日 22:13