トップへ戻る

1粒300メートル

「一粒300メートル」とグリコの箱(4粒入り赤箱)に昔から書かれています。コレ本当? と思って試算しました。1粒は4グラムです、糖分1グラムは4キロカロリーある、と中学校で習いました。エネルギーはジュール(4.2ジュール=1カロリー)で表すのが現代風らしいので、換算すると、グリコ1粒は、

4グラムx4000 カロリーx4.2 = 67000 ジュールのエネルギーを持っていることになる。

 一方、人間が生きるために必要なエネルギー(基礎代謝量、Basic Metabolic Rate BMR) は1日(86400秒)あたり2000キロカロリーくらい。一秒あたりには、23カロリー≅100ジュールとなる。1秒当たり1 ジュールのエネルギーの流れが1W(ワット) だから、人間は1人100Wの生き物と見られる。その生き物が、走る時には平常時の10倍のエネルギー消費をする。だから走ってる人は1キロワット(毎秒1000ジュール)のエネルギー消費をしている事になる。

 結局、67000ジュールを1000ジュール/秒、で割れば、グリコ1粒で走り続けられのは、67秒となる。
300メートル走の日本(アジア)記録は、今ウィキで調べたら、32秒29、金丸祐三、2009年4月19日と書いてあります。我々が走れば丁度60秒そこそこで300メートルいけそう!ということで、一粒300メートル問題、は落着です。

 では、お米の一粒はどれくらいのエネルギー?と次に質問が出るでしょうか?答えは、330ジュールです。BMRと比較すると、お米一粒で3秒間生きられる(階段一段上れる、ともいわれる)ことになりますね。ありがたいですね~、子供の頃、床にこぼれた米粒を踏んだら、バチが当たるぞ~、と叱られませんでしたか?

 一方、福島の原子炉事故で出たセシウム137の放射線(ガンマ線)として、お米一粒分のエネルギー量を身体に受けたら、330シーベルト、となります。すなわち、ガンマ線で1ジュールのエネルギーを身体にうけると1シーベルトの被曝なのです。1シーベルトの放射線被曝は生命に危険です。原子炉作業者の被曝限度は積算で100ミリシーベルト(0.1シーベルト)とされているそうです。

 前に勤めた若狭湾エネルギー研究センターで放射線(陽子線)によるガン治療が実験されていましたので、そこで知ったことは、前立腺ガンの治療では総計で5シーベルト位の放射線をガン部位に当てるとガンが死滅するということでした。人間はそれで助かるのですから、命がけで助かっているわけですね。

 この陽子線という放射線は身体の中を貫通して走っている間は細胞を痛めない、その放射線が停止する場所で一気にエネルギーを放散してその周り(1ミリ以下の範囲)の細胞をやっつける。という特異な性質がある。そのため、あらかじめ正確に放射線が止まる位置を計算して、上手い工夫でガンの場所に集中して、放射線が止まるようにして、5シーベルト当てる。という芸当をするのですね~。それで、治験(治療実験)を受けた人は小生の知る限り数十名全員がほぼ完治していました。

 放射線はあびても痛くもかゆくもない、全然感覚なし、1回の照射は1分間ほど。患者さんは、なんやコレ、と言う感じで入院もなにもしないで、20回ほど通って、おわり。数ヶ月してガンだけ消える。という、ありがたい、お話です。これが5シーベルト。このエネルギー量を、お米の粒数に直すと(5割る330 = 0.01515粒)です。 

 何が言いたいのか、治療の宣伝ではありません(もうタダの治験実験は終わって、今は、福井市にある病院で300万円ほど払わないとやってもらえない)。放射線の有り難さ、というか、怖ろしさ、というか、日常的な感覚からは想像しがたい能力の一端の紹介です。それをエネルギーのあり方、という見方をすれば、分かりやすく説明できる。という話です。

 何の事はない、20℃の水を何トン浴びても、焼けど、はしない。100℃の湯一滴が手にかかったら、アッチッチ~ですね。温度はエネルギーの“効き目”を表す、そして、お米と放射線の間には大幅な温度差(およそ1万倍)、があるんや~、という話です。人がみんな自然にあびる放射線も年間1~2ミリシーベルト(1/1000シーベルト= 1ミリシーベルト)はあるそうですが、それ以上の放射線は浴びたくない。これは誰しも思うことです。でも福島の事故現場に近い人達は否応なく、自然レベルを超えた放射線(ガンマ線)をガマンする生活です。やはり、エネルギーの基礎的な知識を持って、怖がる態度を考えるしかないのでしょうね。そのあたり、新聞にもテレビにも出ない、分かりやすいエネルギー解説が必要です。

 エネルギー学の基礎を、アッそうか、と簡単に理解すること、そして放射線だけでなく、太陽エネルギーの質、量など、と化石燃料、原子力エネルギーとの比較など、についても、根本のところを良く考えれば、サッと理解するのは、容易なのです。

Written by Shingu : 2013年04月26日 07:34

トップへ戻る