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エネルギー低消費社会へのロードマップ

「全国日本学士会誌、アカデミア145号(2014年4月号)に掲載」

はじめに―低エネルギー消費社会以外に道はない 

「持続的発展」という標語は社会のキーワードとなっている。これは国連が主催した1992年のブラジル・リオデジャネイロでの「環境と開発に関する国際連合会議」で採択された国際的な標語である。

発展ということは、子供の成長なども含めて、成長期から成熟期に達して必ず終わりがなければならない。もし持続的に発展が続けば必ず破綻が起こる。株価が永久に値上がりし続けることがないことは誰もが認めざるを得ないのである。

かねてより、この言葉の含む矛盾が気に掛かっていたが、2006年の初夏に、フランスの片田舎で開かれた、筆者もメンバーの一人であるアメリカのNGOのプライベートな、国連のOB数人も参加した小さい集会で、リオ会議の議長を務めたインドのニテイン・デサイ氏と話をする機会があり、幸い泊まりがけのゆったりとした会だったので、上記の疑問について、たっぷりと話を聞くことができた。

はじめはなんとなく歯切れのよくない返答をしていたデサイ氏だったが、会話のなかで、くり返し、発展の持続、という表現の矛盾性を問うたところ、彼がリオ会議ではじめに提案した標語は、責任ある発展(Responsible Development)であった、と打ち明けてくれた。なにしろリオ会議は世界の政治家など多忙を極める人物の集まりなので、宣言を採択するまでの実質的討議時間は限られている。

各国の合意を重視する議長としてはこれを、持続的発展(Sustainable Development)と置き換えて採択をするしか、なかったらしい。社会は人間の身体のように成人したら成長が止まる、という自然が設定したメカニズムを具備していない。人間が意図して発展を続けてきた社会は、その限界を見きわめて、人間がコントロール・制御しなければならない。

本稿は社会運営のバックボーンであるエネルギー消費とそれに付随する環境などの問題を分析してえられる明快な目標、エネルギー低消費社会実現、への道筋を示すことを目的としている。人体のように、成熟して後、健康に幸せに活動できる社会の実現に向けて、最重要の要因であるエネルギーについて、理解を深めることを基礎として、人間の本性分析にまで立ち返って、総合的に、目標を実現する、道程図、ロードマップを提示することを試みたい。

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Written by Shingu : 2014年06月10日 16:18

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