「宗教・哲学・科学」特集 まとめ:ルネサンスの期待
本アカデミア誌の10月、12月と連続して「宗教と哲学と科学」をテーマとする特集が組まれました。これ以上大きく考えられない大胆な企てでしたが、執筆頂いた先生方の、いずれも素晴らしい文章によって世界にない貴重な文集ができあがったと思います。
今の世の中はどんな分野でも「役に立つこと」が求められています。宗教家や哲学者や科学者も、新聞などに書く文章は「このように役に立つのです…」と締めくくることが常識になっています。
そして、役に立つ、ということは経済活性化による利便性や金銭的利得の増大と同義語になっています。「人は生きるためにパンを食べるのであって、パンを食べるために生きるのではない」という単純至極の哲学が、今以上に忘れられ、無視される時代があったでしょうか?
はっきり言って生きることの意味がはき違えられた現代は、人の自由な発想、トンデモナイことに興味をもち集中する事を羨み尊敬する人間らしい幸せを、社会的風潮として禁じている「思想の暗黒時代」である、といっても言い過ぎではないでしょう。
嬉しいことに、本誌今回の連続特集に寄稿された文章はいずれも「何の役にもたたない」話ばかりです。そして、どの文を読んでも真新しく心を開かされ感動できるものです。「役に立つ」という言いわけ(免罪符)をドブに捨てても価値のある貴重な文ばかりです。パンを求め、より沢山求めることに自縄自縛に陥っている現代社会からの解放、ルネサンス、の先駆けがこの特集であるという気持ちにな
れるようです。
この特集号が京都に本拠を持つ全国日本学士会から出版されたことは、姉妹都市であるフィレンツェ(フローレンス)がルネサンス発祥の地であることにちなんだ因縁がある気もします。政治からも経済からも離れた古都には自由な発想、人の本来の姿を見つめなおす雰囲気を育む土壌があるのかもしれません。どうか読者の方々もその気になって、特集号を読み広めて頂ければ幸いです。
「宗教と哲学と科学」特集:ルネサンスの期待
新 宮 秀 夫特定非営利活動法人京都エネルギー・環境研究協会代表
Written by Shingu : 2014年12月27日 14:55